偽の写真とAI画像
ディープフェイクの見分け方:偽の動画と音声にだまされない
ディープフェイクの見分け方は、口の動きや輪郭、光の不自然さを見ることと、内容の怪しさで立ち止まることの二つです。著名人の偽の投資広告、家族を装う偽の電話への備え方もまとめました。

ディープフェイクの見分け方は、二つの方向から考えます。一つは映像と音声の不自然さで、口の動きと声のずれ、顔の輪郭のぼやけ、まばたきや表情の硬さ、光の当たり方を見ます。もう一つは内容で、お金を求める、急がせる、秘密にさせる、という話なら、映像がどれほど本物らしくても立ち止まります。見た目で見抜けないディープフェイクも増えているので、内容で判断する習慣が一番の防御です。
ディープフェイクとは、AIで作った偽の動画や音声、画像のことです。総務省の情報通信白書によると、ディープラーニングとフェイクを組み合わせた造語です。人が実際には言っていないことや、していないことを、本当のことのように見せるAI技術のコンテンツを指します。以下では、ディープフェイクの見分け方と、身近な被害の手口、備え方を紹介します。
ディープフェイクの見分け方:映像の手がかり
ディープフェイクの動画には、注意して見ると不自然な点が残ることがあります。次の点を確かめましょう。
- 口の動き: 声と口の動きがずれていないか、口の中や歯がぼやけていないか。
- 顔の輪郭: 顔と髪、顔と首の境目がにじんだり、ゆらいだりしていないか。
- まばたきと表情: まばたきが少なすぎる、表情の変化がぎこちない、ということはないか。
- 光と影: 顔に当たる光の向きが、背景や体と合っているか。
- 動き: 横を向いたときや、手が顔の前を通ったときに、顔がくずれないか。
画質の悪い動画や、小さな画面では、こうした違いに気づきにくくなります。気になる動画は、大きな画面で、一時停止しながら見ると見つけやすくなります。
ディープフェイクの音声の見分け方
ディープフェイクは、映像だけではありません。本人の声をまねた音声も作れるようになっています。SNSに投稿した動画の声が、材料に使われることもあります。
音声のディープフェイクには、次のような特徴が出ることがあります。
- 抑揚が平板: 感情の動きが少なく、一定の調子で話す。
- 息づかいがない: 呼吸の音や、言いよどみが不自然に少ない。
- 会話がかみ合わない: 質問に対して、少しずれた答えが返ってくる。
- 背景の音が不自然: 周りの音がまったくない、または不自然に途切れる。
ただし、電話の音声は質が低いので、本物の声でも聞き取りにくいことがあります。声の特徴だけで判断するのは難しいので、次に紹介する内容の確認が大切です。
見た目で見抜けなくなっている
ディープフェイクの技術は、急速に進歩しています。総務省の白書は、生成AIの進歩で非常に高品質な画像や音声、動画を作れるようになり、対策がいたちごっこの様相を呈していると書いています。白書は、生成AIで作られた岸田総理大臣の偽動画がSNSで拡散した例も挙げています。
つまり、不自然な点が見つからないことは、本物の証明にはなりません。見た目の確認は大切ですが、それだけに頼るのは危険です。ディープフェイクの見分け方で一番効くのは、内容の怪しさに気づくことです。

内容で判断する:ディープフェイクの詐欺のサイン
ディープフェイクが詐欺に使われるとき、内容にははっきりした共通点があります。
- お金を求める: 投資、送金、ギフト券の購入など、お金の話になる。
- 急がせる: 「今日中に」「今すぐ」と、考える時間を与えない。
- 秘密にさせる: 「誰にも言わないで」「家族に知られたくない」と言う。
- いつもと違う連絡手段: 知らない番号や、新しいアカウントから連絡してくる。
この四つのどれかに当てはまれば、映像や声がどれほど本物らしくても、いったん止まりましょう。本物の家族や知人なら、確かめる時間をとっても怒らないはずです。
著名人のディープフェイク広告と投資詐欺
日本で特に広がっているのが、著名人を装った投資の広告です。警察庁は、2025年のSNS型投資詐欺について、バナーなどの広告で、著名人の画像や動画を無断で使用した広告が確認されており、「必ずもうかる」「元本保証」といった文言も見られたと公表しています。
同じ発表によると、2025年のSNS型投資詐欺の被害は9,523件、1,288.0億円でした。広告をクリックすると、LINEなどのグループに誘われ、偽の投資アプリでお金を振り込ませる流れが典型的です。
著名人が個人に投資をすすめる広告は、まず疑ってください。本人の公式アカウントや所属事務所が、なりすまし広告への注意を出していることもあります。
家族や知人を装う偽の電話やビデオ通話
ディープフェイクは、家族や知人を装う詐欺にも使われることがあります。子どもや孫の声で「事故を起こした」「お金が必要」と電話がかかってくる。上司の顔と声でビデオ通話がかかってきて、急ぎの送金を指示される。こうした手口です。
備えとして、次のことを決めておくと安心です。
- かけ直す: 一度電話を切り、自分が知っている番号にかけ直して確かめる。
- 合言葉を決める: 家族の間で、本人しか知らない合言葉を決めておく。
- 一人で決めない: お金の話は、別の家族や知人に相談してから決める。
不安を感じたら、警察相談専用電話「#9110」に相談できます。
ディープフェイクを見つけたら:拡散せず、報告する
真偽の分からない動画や画像を見つけたら、まず拡散しないことが大切です。驚くような映像ほど、すぐに誰かに知らせたくなります。でも、それがディープフェイクだったら、知らないうちに偽の情報を広める側に回ってしまいます。
詐欺の広告や、なりすましの投稿を見つけたら、SNSや動画サイトの報告機能で運営に知らせましょう。広告であれば、広告のメニューから報告できることが多いです。報告が集まれば、削除や広告の停止につながります。
自分や家族の顔や声が無断で使われていたら、投稿のURLと画面を保存したうえで、運営に削除を求めます。被害が大きいときは、警察や法務局の人権相談にも相談できます。
ディープフェイクと写真の確認
写真の真偽を確かめる方法は、ディープフェイクにも役立ちます。出どころをたどる、同じ画像を検索する、ほかの角度の写真があるかを探す。画像検索のやり方は画像検索のやり方のガイドで、静止画のAI画像の見分け方はAI画像の見分け方のガイドで紹介しています。確認の全体像は写真が本物か確かめる方法にまとめました。
マッチングアプリやSNSで知り合った相手が、ビデオ通話を断り続けたり、映像が不自然だったりする場合は、ロマンス詐欺の可能性も考えましょう。
よくある質問:ディープフェイクの見分け方について
ディープフェイクの動画はどう見分けますか?
口の動きと声のずれ、顔と髪の境目のにじみ、まばたきや表情のぎこちなさ、光の向きの矛盾を見ます。ただし、新しいディープフェイクは見た目では見抜けないこともあります。お金を求める、急がせる、といった内容の怪しさで判断することが大切です。
ディープフェイクの音声は見分けられますか?
抑揚が平板、息づかいがない、会話がかみ合わない、といった特徴が出ることがあります。ただし、電話の音声は質が低いので、声だけで見分けるのは難しいです。一度切って、知っている番号にかけ直して確かめましょう。
著名人が投資をすすめる広告は本物ですか?
まず疑ってください。警察庁は、SNS型投資詐欺の広告で、著名人の画像や動画を無断で使用したものが確認されていると公表しています。広告から投資のグループに誘われたら、取引をやめ、本人の公式アカウントなどで確かめましょう。
家族の声で電話がかかってきてお金を求められたら?
一度電話を切り、自分が知っている家族の番号にかけ直して確かめます。家族の間で合言葉を決めておくのも有効です。お金の話は、一人で決めずに別の家族に相談しましょう。不安なときは「#9110」に相談できます。
ディープフェイクの被害にあったら、どこに相談しますか?
お金をだまし取られたら、すぐに金融機関と警察に連絡します。自分の顔や声が無断で使われた場合は、SNSの運営への報告や、法務局の人権相談、警察への相談を検討しましょう。証拠として、動画や投稿のURLと画面を保存しておきます。
おわりに:ディープフェイクの見分け方は、内容で立ち止まること
ディープフェイクの見分け方で一番大切なのは、映像や声の出来栄えではなく、内容で立ち止まることです。お金を求める、急がせる、秘密にさせる。この三つがそろったら、どれほど本物らしくても、一度切って確かめましょう。
技術が進むほど、見た目で見抜くのは難しくなります。だからこそ、かけ直す、合言葉を使う、一人で決めない、という習慣が、家族と自分を守る力になります。
特に、離れて暮らす親や祖父母とは、こうした手口があることを一度話しておきましょう。「声が本人でも、お金の話はかけ直してから」と決めておくだけで、被害の多くは防げます。


