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敷金返還のルール:返ってこないときの確かめ方と相談先

敷金返還は、民法で決まった借り主の権利です。通常の使い方による傷や経年劣化は借り主の負担ではありません。請求が高いときの確かめ方、話し合いの進め方、相談先をまとめました。

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表紙:敷金返還のルール、返ってこないときの確かめ方と相談先

敷金返還は、民法で決まった借り主の権利です。退去して部屋を明け渡したら、大家は敷金から未払いの家賃などを差し引いた残りを返さなければなりません。通常の使い方による傷や汚れ、経年劣化の修繕費は、原則として借り主の負担ではありません。請求が高いと感じたら、明細を求め、国土交通省のガイドラインと見比べましょう。

退去のときに、敷金がほとんど返ってこない、敷金を超える修繕費を請求された、という相談は少なくありません。国民生活センターに寄せられた賃貸住宅の原状回復をめぐる相談は、2025年度に14,711件ありました。借りる前の部屋探しで気をつけたい点は、おとり物件のガイドで紹介しています。以下では、敷金返還のルール、請求が妥当かを確かめる方法、話し合いがまとまらないときの相談先を紹介します。一般的な情報であり、法的な助言ではありません。

敷金返還のルール:民法で決まっていること

敷金返還のルールは、2020年4月に施行された改正民法で、はっきり書かれるようになりました。民法の第622条の2は、賃貸借が終わって部屋を返したとき、大家は受け取った敷金から、家賃など借り主が払うべき金額を差し引いた残りを返さなければならないと定めています。

原状回復の範囲も、民法の第621条に定められています。借り主は、受け取った後に生じた損傷を元に戻す義務を負います。ただし、通常の使用で生じた損耗と、経年変化は除かれます。借り主に責任がない損傷も、元に戻す義務はありません。

つまり、普通に住んでいてできた家具の跡や日焼け、年月による劣化は、敷金から差し引かれるべきものではないのが原則です。差し引けるのは、借り主の不注意や、通常の使い方を超えた使い方でできた傷などです。

原状回復のガイドライン:負担の目安

国土交通省は、原状回復の費用を大家と借り主のどちらが負担するかについて、一般的な基準をガイドラインにまとめています。1998年に作られ、2004年と2011年に、裁判例やQ&Aを加える改訂がされました。

例一般的な考え方
家具の設置による床のへこみ、日焼けによるクロスの変色通常の使い方による損耗で、大家の負担
画びょうの小さな穴、冷蔵庫の後ろの壁の黒ずみ通常の使い方の範囲とされることが多い
たばこのヤニや臭い、ペットによる傷借り主の負担になることが多い
引っ越しでつけた大きな傷、結露を放置したカビ借り主の負担になることが多い

ガイドラインには、年数がたった設備ほど、借り主の負担が小さくなるという考え方もあります。たとえば、クロスは年数とともに価値が下がるので、長く住んだ部屋のクロスを張り替える費用を、借り主が全額負担するのは妥当ではないとされています。

ガイドラインは法律ではなく、契約書の内容が優先されるのが原則です。ただし、契約書の条文があいまいなときや、契約時に問題があるときは、ガイドラインを参考に話し合うよう国土交通省は案内しています。

退去費用が高いと感じたら:確かめる順番

退去費用の請求が高いと感じたら、すぐに払わず、次の順番で確かめましょう。

  1. 明細をもらう: どの部屋の、どの部分を、いくらで修繕するのか、内訳を書面で求めます。
  2. 契約書を確かめる: 原状回復や敷引き、クリーニング費用について、特約があるかを見ます。
  3. ガイドラインと比べる: 請求された項目が、通常の損耗や経年劣化にあたらないかを確かめます。
  4. 入居時の記録を出す: 入居時からあった傷なら、写真やチェックリストで示します。
  5. 書面で伝える: 納得できない項目と理由を、メールや書面で大家や管理会社に伝えます。

話し合いは、電話より記録に残る方法で進めましょう。相手の返事も、日付が分かる形で残しておきます。

鍵を手渡す二人の手
退去の立ち会いでは、指摘された傷を一緒に確かめ、その場で写真に残します。写真: RDNE Stock project / Pexels

敷金返還に役立つ記録:入居時と退去時の写真

敷金返還の話し合いで一番強い材料は、入居時と退去時の写真です。入居時からあった傷なのか、住んでいる間にできた傷なのかを、写真で示せるからです。

国土交通省も、入居時と退去時に物件の状況をよく確かめておくことが、トラブルを防ぐのに有効だとしています。入居時の写真の撮り方は入居時の写真のガイドで詳しく紹介しています。

退去時は、荷物を運び出した後に、入居時と同じ場所を同じ角度で撮りましょう。立ち会いで傷を指摘されたら、その場で写真に撮り、どの傷について話したかを記録します。立ち会いの書類に、その場でサインを求められても、納得できない項目があれば、すぐにサインしなくてもかまいません。写真に日付をはっきり残す方法は、写真の日付のガイドで紹介しています。

東京ルールなど、地域のルール

東京都には、賃貸住宅の紛争を防ぐための条例があります。いわゆる「東京ルール」です。都内の物件を仲介する宅建業者は、契約の前に、原状回復の基本的な考え方などを借り主に説明することになっています。

東京都は、その内容を賃貸住宅トラブル防止ガイドラインにまとめています。都外の物件でも、原状回復の考え方を知るうえで参考になります。

地域によっては、敷金の代わりに「保証金」と呼んだり、退去時に一定額を差し引く「敷引き」があったりします。こうした取り決めは、契約書の特約として書かれているので、契約の前に必ず確かめましょう。

敷金返還の話し合いがまとまらないとき

大家や管理会社との話し合いがまとまらないときは、専門の窓口に相談します。まずは消費者ホットライン「188」で、近くの消費生活センターを案内してもらいましょう。相談員が、ガイドラインを踏まえて助言してくれます。

それでも解決しないときは、法的な手続きも選択肢になります。60万円以下のお金の請求なら、簡易裁判所の少額訴訟が使えます。民事訴訟法の第368条に定められた手続きで、原則として1回の審理で判決が出ます。法テラスでは、法律相談の窓口を案内してもらえます。

不動産の相談先の全体像は、不動産の詐欺の相談先のガイドで整理しています。

撮影日時を確かめられる写真で敷金を守る

敷金返還の話し合いでは、「その写真は本当に入居時に撮ったのか」と疑われることがあります。スマートフォンの日時は、編集アプリで変えられるからです。

KatiTrustのようなカメラアプリでは、アプリで撮った写真や動画に確認コードが付き、相手はkatitrust.comで、撮影後に変更されていないこと、撮影日時、おおよその場所を確かめられます。確認コードは一定期間だけ有効なので、入居時と退去時に撮ったら、その日のうちに相手に送って確かめてもらい、元のファイルは別に保存しておきましょう。

よくある質問:敷金返還について

敷金は必ず返ってきますか?

民法の第622条の2により、部屋を返したら、大家は敷金から未払いの家賃など借り主が払うべき金額を差し引いた残りを返さなければなりません。差し引けるのは、借り主の責任でできた損傷の修繕費などで、通常の損耗や経年劣化は原則として含まれません。

退去費用が敷金を超えて請求されました。払わなければいけませんか?

まず明細を求め、契約書とガイドラインと比べましょう。通常の損耗や経年劣化にあたる項目が含まれていれば、その分を払う必要はないのが原則です。納得できない項目は書面で伝え、話し合いがまとまらなければ消費生活センターに相談します。

クリーニング費用は借り主の負担ですか?

ガイドラインの考え方では、通常の清掃をしていれば、専門業者によるクリーニングは大家の負担とされています。ただし、契約書にクリーニング費用を借り主が負担するという特約があれば、その内容が関係します。契約の前に確かめておきましょう。

敷金がなかなか返ってきません。どうすればいいですか?

まず書面やメールで、返還の時期と金額を問い合わせます。返事がない、話し合いがまとまらない場合は、消費者ホットライン「188」に相談しましょう。60万円以下の請求なら、簡易裁判所の少額訴訟という手続きもあります。

入居時の写真がなくても、敷金は返ってきますか?

写真がなくても、通常の損耗や経年劣化は借り主の負担ではないという原則は変わりません。ただし、傷がいつできたかを示す材料がないと、話し合いは難しくなります。退去時の写真や、ガイドラインの考え方を使って話し合いましょう。

おわりに:敷金返還は、ルールと記録で守る

敷金返還は、借り主に認められた権利です。通常の使い方による傷や経年劣化は、原則として借り主の負担ではありません。退去費用が高いと感じたら、明細を求め、契約書とガイドラインと比べてから話し合いましょう。

そして、入居時と退去時の写真が、話し合いを事実にもとづいたものにしてくれます。次の部屋では、入居の日に記録を残すところから始めてください。困ったときは、188に電話すれば相談先を教えてもらえます。